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「なぜハンドボールは日本で人気が出ないのか?」

 皆さんは「ハンドボール」というスポーツをどの程度ご存じだろうか?
 「聞いたことはある。」「宮崎大輔って有名な選手いるよね。」「中学校の体育の授業でやった。」私が知人にハンドボールのことを尋ねると、概ねこれらの答えが返ってくる。日本におけるハンドボールの認識はこの程度であり、マイナースポーツというカテゴリーに入れてしまわれても、反論は出来ないだろう。

 ハンドボールとは、1チーム7人、縦20m横40mのコートで前後半30分で試合を行い、相手より多くの得点を奪いあうスポーツである。ハンドボールは「サッカーとバスケットボールの中間のスポーツ」とよく言われるが、サッカーよりもたくさん点が入るスピード感と、バスケットボールよりも身体接触が認められているという激しさを持ち合わせたスポーツである。実際にハンドボールを見たことが無い方は、ぜひこの動画をご覧いただきたいと思う。(http://www.youtube.com/watch?v=Uk6T7pXnnG0)

 ヨーロッパにおいて、ハンドボールはサッカー並みの人気を誇るスポーツである。2011年に行われた世界選手権男子決勝のフランス対デンマークにおいて、ハンドボール発祥の地でもあるデンマークでは、人口約546万人の内、約267万人が生中継を視聴していたというデータもあるほどである。私はスペインを旅行で訪れた際、現地でプロのリーグ戦を観戦した。ハンドボールの専用スタジアムでその試合は行われ、平日の夕方であったため、観客はまばらであったが、優に一万人は収容出来るその大きさに大変驚いたことを覚えている。また、専用スタジアムの外壁にはスター選手たちの写真があったり、スタジアム内ではチームのユニフォームも売られていたりと、ヨーロッパでのハンドボールの人気を目の当たりにした。

 「なぜ、ハンドボールは日本では人気が出ないのか?」私は常にこの疑問と共に、もどかしさを感じてきた。
 2007年、中東諸国に有利な判定が繰り返された、いわゆる「中東の笛」問題で、前代未聞のオリンピック予選のやり直しが行われた。この問題はスポーツ番組だけでなく、ワイドショーなどにも大きく取り上げられ、それまでメディア露出の少なかったハンドボールは大きく注目された。しかし、やり直しの試合は男女ともに韓国に敗れ、オリンピック出場は叶わず、それ以降メディアに取り上げられることは無くなり、盛り上がりは沈静化してしまった。
 「この試合に勝っていれば、ハンドボールも人気が出たのに…」という声がよく聞こえた。しかし、私はそうは思わない。確かに、女子サッカーは、代表の「なでしこジャパン」がワールドカップで優勝したことにより、大きな注目を集め、国内のリーグ戦の観客も大幅に増加した。ただ、これはワールドカップで優勝したからというわけではなく、男女の違いはあれ、サッカーが日本でそもそも人気のあるスポーツであったからではないか、と私は考えている。ハンドボールは日本では馴染みのないスポーツである。オリンピックに出場しただけでは、人気が出るとは考えにくい。

 私は、ハンドボールの人気を上げるためには、オリンピック出場のためにただ勝利を追い求めるだけではなく、ハンドボールを多くの人に知ってもらう草の根の活動も大きな意味があると考える。当たり前のことだと感じるかもしれないが、それが出来ていないのが日本のハンドボール界の現状でもある。日本には実業団のリーグである日本ハンドボールリーグが存在しているが、テレビで放映されることは殆ど無い。実際に会場に足を運び、入場料を払わないと観戦することが出来なかった。ハンドボールに関わりが無い人は、とても見に行こうとは思わないだろう。そこで、自社もハンドボールチームを所有している湧永製薬が、2011年から自チームの試合のインターネット中継を始めた。また、元日本ハンドボールリーグの選手が、各地でハンドボール体験会を開催するなど、多くの方が新たなファン獲得のために尽力している。

 日本ハンドボール協会が、ハンドボールの人気向上のために、「がんばれハンドボール20万人会」という施策を行っている。これは少子化の影響で、登録人口が減少していくスポーツが多い中で、ハンドボールをファン全員で支えていこうというものである。具体的には、登録料を支払う代わりに、ハンドボールの公式試合のパスポートなどの特典が貰えるようになっている。しかし、これは元々ハンドボールと関わりのある人を対象にしており、ハンドボールと関わっている人たちの中でお金が循環しているだけであり、人気拡大のための施策としてはふさわしくないと感じる。さらに協会が主体的に現状を打破するために取り組んで行けば、より規模の大きい施策を行えるようになる。私も、昨年の1月に元日本代表主将の方と連携して、ハンドボール未経験者を対象としたハンドボール体験会を実施した。約70名の参加者に集まって頂けたが、私たちの力ではより大きな規模での開催や定期的な開催が難しく、限界があると強く感じた。今行われている取り組みを、より大きなものにするためにも、協会のサポートが必要不可欠ではないだろうか。

 「走・投・跳」全てのスキルが求められ、スピーディーでダイナミックなスポーツであるハンドボール。私が大好きなこのハンドボールというスポーツを多くの皆さんに知って頂きたい。私もハンドボールのために自分で出来ることはしていくつもりであるし、是非生の試合を皆さんにも一度ご覧いただきたいと思う。

【参考文献】 日本ハンドボール協会 http://www.handball.jp/fans_club.html (最終閲覧日2013/07/02)
デンマーク/コペンハーゲン特派員ブログ地球の歩き方 http://tokuhain.arukikata.co.jp/copenhagen/2011/01/post_45.html (最終閲覧日2013/07/02)
Youtube http://www.youtube.com/?gl=JP&hl=ja(最終閲覧日2013/07/09)
MSN 産経ニュース(体験イベントが取り上げられた記事) http://sankei.jp.msn.com/sports/news/120109/oth12010907000004-n1.htm(最終閲覧日2013/07/24)
(近藤雅典)

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