「孤立死」という言葉を聞いた時、皆さんが真っ先に思い浮かべるのはどういった状況だろうか。
一人暮らしのお年寄りが家で亡くなっているのがしばらく経ってから発見される。こうした状況は何十年も前から「孤独死」という言葉と共に報じられていた。「孤独死」も「孤立死」も明確に定義はされていない。しかし、ここ最近のニュースでは、家族全員が亡くなっているのが発見されたという状況が「孤立死」という言葉と共に報じられている。
「孤立死」は、一人暮らしや高齢者に限られたことではない。
2012年1月20日、札幌市の賃貸マンションで無職の姉(当時42)と知的障害者の妹(当時40)が亡くなっているところが発見された。それを皮切りに、同年2月13日には東京都立川市の母(当時45)と知的障害児の息子(当時5)が死後約2カ月の状態で発見され、2月20日にはさいたま市の男性(当時64)とその妻(当時63)、息子(当時39)が亡くなっているところが発見されるなど、何件もの家族単位での孤立死が立て続けに明らかになっていった。連日新聞やニュースに大きく取り上げられていたため、記憶に残っている人も多いのではないか。では、なぜ家族単位で、そして長い期間に渡って発見されない孤立死がこんなにも起こってしまうことになったのだろうか。
当時の新聞記事を遡ってみると、周囲の人々や自治体の声がいくつも取り上げられている。しかし、「付き合いがないから知らなかった」「誰が住んでいるか、顔も知らなかった」「知っていれば何かできたかもしれない」といったように地域のコミュニティの繋がりの弱さを感じる言葉が多かった。現に、先に挙げた3つのケースに限らず、ガスが長く使われていなかったり、家賃が支払われなかったりしたことから管理会社が警察や親族に連絡をしたことが発見のきっかけとなっている事例が多い。町内会に入っていない、近所の家との付き合いがないというように、地域間の繋がりがない、あるいは繋がろうとしないために、外へ助けを求めることができず、周りも異変を察知することができず、家族単位での孤立死が起こってしまっているのではないか。
相次ぐ孤立死を無くしていこうと、各地域では様々な取り組みが行われている。
立川市では孤立死などを防ぐために専用電話「見守りホットライン」を2013年4月1日から開設した。郵便物が溜まっている、洗濯物が何日も干したままなど、近所の家に異変が感じられた際に電話をするようにとしている。
また、様々な自治体で事業主と協定を結んでいるケースもいくつもある。埼玉県坂戸市では新聞販売所がお年寄りや障害者らの世帯で異変があった場合、市に連絡するように協定を結んだ。神奈川県は検針などで契約世帯の異変をいち早く察知し、適切な支援に繋げられるように県LPガス協会と協定を結んだ。
しかし、こうした地域の取り組みだけでなく、孤立死を無くしていくためにはもっと根本的な部分で一人一人が変わる必要があると私は考える。それは「周囲と関わろうという意識」を一人一人が持つことである。その中でもすぐに実践できるものは「挨拶」ではないだろうか。引っ越しの際や偶然道ですれ違った時に挨拶をする。そういった些細なことから少しずつ人と人との繋がりを作り、何かあった時異変を察知したり、助けを求めたりすることができる関係が生まれていくだろう。
参考
朝日新聞(2012年5月18日、7月11日、2013年3月19日、3月29日)
毎日新聞(2012年4月8日)
立川市ホームページhttp://www.city.tachikawa.lg.jp/cms-sypher/www/normal_top.html
坂戸市ホームページhttp://www.city.sakado.lg.jp/,br>
神奈川県ホームページhttp://www.pref.kanagawa.jp/
(山越園子)