1. トップページ
  2. 民主党代表選を振り返る 唐渡健[政治経済][2010/12/22]

民主党代表選を振り返る 唐渡健[政治経済][2010/12/22]

今や忘れられてしまった民主党代表選

2010年9月14日に民主党代表選挙が行われ、選挙前の評判では菅直人首相と小沢一郎氏のどちらが勝ってもおかしくないと言われていたが、結果は菅首相の再選に終わった。正確な数値を言えば、菅氏721点、小沢氏491点(内訳:議員票412/400,地方票60/40,党員票249/51)である。世論により近い、あるいはメディアの影響をより大きく受ける党員票と議員票それぞれの内訳が全く異なる。この結果から、議員票は世論をくみ取れていないのではないかということが考えられる。あれから早くも三カ月が経ち、今となっては忘れてしまった人もいるかもしれないが、まずは選挙制度そのものを見ていきたい。

方向性の見えない選挙制度

そもそも民主党代表選挙にはそのやり方自体への疑問があった。今回の選挙は党所属の国会議員が2ポイント分となる一票を投じ、党所属の地方自治体議員が郵便投票を行いその割合に基づいて100ポイントを両者で分け、党員及びサポーター票は小選挙区制度をとり300ある選挙区それぞれで勝ったほうが1ポイントを得るという方式で行われた。このようなやり方に対し、橋下徹大阪府知事は4日「公開討論も何もせず、身内だけで決める仕組みはおかしい。国会議員の常識は国民の非常識だ」と批判した(6月4日付『読売新聞』)。その点に関しては、自民党総裁選も、国会議員と党員・党友の投票によって決まるので根本的な違いはないと言ってよい。2日には日本記者クラブで民主党代表選討論会が開かれているが、みんなの党の渡辺喜美代表は「あきれるばかりの低レベルの争い」と断じている(9月2日付『読売新聞』)。また、この選挙では党員・サポーター票が全体の25%を占めるが、小選挙区制を導入しているため、合計得票数は小沢氏90194票、菅氏137998票(民主党ホームページより)であるのに対してポイントは51対249と死票が多くなってしまっている。また、その中に在日外国人が含まれることも今後検討が必要であるとの議論が上がった。
今回の代表選は民主党議員や会費を払った党員、サポーターの投票で決まるものだ。それならば札幌や梅田、新宿といった大勢の人が集まる場で演説を行う意味は何なのだろうか。投票権を持たない人にわざわざ演説をするくらいなら、テレビやインターネットで党員、サポーターに支持を呼びかけた方が効率が良いのでは、とも思われる。

政策かそれともイメージか

選挙期間中、特に8月の終わりから、新聞や雑誌、テレビ、そしてインターネット上で実に様々な情報が飛び交った。そういったマスメディアがどのような報道をしていたかということを振り返ってみたい。
今回の選挙で政策上の焦点となったのはマニフェストの修正と財源と消費税の問題である。菅首相はマニフェストに修正を加え、消費税を上げることも視野に入れる考えを示し、対して小沢氏はとにかく無駄な歳出の削減を重視した。『日本経済新聞』(9月7日付)によれば、結局今回の代表選は小沢路線の是非に決着をつけるものであり、衆議院選挙の前に行わなければならなかった、そして現在の「党内論理で首相のたらい回しをためらわない民主党の姿は自民党政権の末期と同じだ」との批判も付け加えている。
しかし、それ以前にこの代表選は政策云々というよりも、政治とカネ問題に始まる小沢氏個人の一連の動きを支持するかどうかにスポットライトが当てられていたという感触が否めない。例えば、『週刊朝日』(9月24日号)に小沢氏と青木愛衆議院議員の不倫報道が載せられるといった、政治上の方針や信念とは何ら関わりのない情報が数多く流された。さらに、今回の代表選は党内のものであったため、インターネット上での活動も禁止されておらず、ニコニコ動画(インターネット上の動画配信サービス)に小沢氏が出演して視聴者に語りかけることもあった。連日のテレビ報道では菅首相のグループを構成するのが何人、小沢氏の支援に鳩山由紀夫元首相がついた、といった勢力図の変容が伝えられることがほとんどであり、ついには双方を支持する民主党議員の名前のリストが雑誌に載るほどだった。もちろん、思い通りの政治を行うためにはできるだけ多数の力が必要になるのは当然だとしても、政策や方針に関しても徹底した議論をしてもらいたい。そのためにはメディアが適切に争点を取り上げる必要がある。今回の選挙に関して言えば、財源の問題は取り上げられていたものの、それに焦点があてられていたような印象は受けなかった。我々の側で情報を取捨選択しなければならないことは言うまでもない。

今回の選挙の評価と今後に向けて

今回の民主党代表選は海外からも注目を集めており、英紙『フィナンシャル・タイムズ』(9月1日付)は「日本は誰でも15分は首相になれるほどに平等主義を完成させている」という記事を載せ、日本の政治家のたらいまわしを揶揄した。一方、日本国内の各紙は、選挙後の人事で小沢氏を登用するかどうかがカギとなっていると書いている。結局、「小沢氏が自らを支持する勢力を結集させ、今後の政局で主導権を握るとの観測は消えない」(11月27日付『日本経済新聞』)という記事すら上がっている。この先海外及び国内メディアがどのような記事を書くかは、菅首相のこれからの動向にかかっていると言えるだろう。選挙から三カ月がたった時点で21%と横並びになった支持率・不支持率(12月14日付 『朝日新聞』)がどうなっていくか今後も各メディアの報道に注目したい。

参考
『朝日新聞』
『日本経済新聞』
『読売新聞』
『フィナンシャル・タイムズ』
『週刊朝日』
産経ニュースHP

カテゴリ別記事

シリーズ・放送人記者インタビュー2011