木村庸利氏は1936年に和歌山県に生まれた。育ち盛りの時期が戦中・戦後の混乱期で、十分に腹を満たすことが出来なかったと幼少期を振り返る。鉄道員であった父親の「勉強して東大に行け」「本庁の課長クラスになったら、そりゃあ権力が絶大だから」という勧めで、東京大学受験を決意するも叶わず、慶應大学へ入学。就職活動の際に学友達と、業界で徐々に頭角を現してきていた電通を受け、1961年に入社。
そんな最中、1995年に阪神・淡路大震災が関西を襲う。大阪支社社屋内も機材が散乱する中、社員で手分けをして得意先のお宅へ水を背負って行ったという。そして一番の被災地である神戸市から、被災者を勇気付ける催しの委託を受けることになった。木村氏を中心としてプロジェクトを結成し、神戸の再生・再興を願った「ルミナリエ」を完成させた。それまで黒子役であった電通が、表立って制作したこのイベントを、木村氏は「ライフワーク」と語る。
2002年からは系列財団の理事長を務め、アドミュージアム東京の設立や学生支援など、未来を担う世代に広告の魅力を伝える事に注力してきた。現在の日本に漂うを閉塞感を打破するために、広告の力は不可欠であると話す。
インタビュワー主担当:夏刈拓磨 副担当:仲村涼