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アメリカ女子ゴルフにおけるスポーツの国際化 長谷川博紀[海外][2011/1/17]

相撲界とアメリカ女子ゴルフの共通点

 野球賭博問題や大麻問題など近年なにかと世間を騒がすことが多い相撲界。特に野球賭博問題では、現役の大関が解雇されるという事態にまで発展した。しかし、相撲界において今一番問題と言えることは、番付上位に位置する力士が横綱白鵬以下、外国人力士が大多数であるということではないか。勿論外国人力士に責任があるわけではない。しかし、近年の大相撲人気の低下の理由として、強い日本人力士がいないということが挙げられるだろう。
 相撲界と同じような問題を抱えているのが、アメリカにおける女子ゴルフである。アメリカほどのスポーツ大国において、他国のスポーツ選手に押されているというのは、信じられないことかもしれない。しかし、事実押されているのである。男子においては、アメリカ選手が中心勢力であるが、女子ゴルフとなると全く話が違ってくるのである。
 具体的なデータで言うと、LPGA(全米女子ゴルフ協会)11月7日発表の獲得賞金ランキング上位20人の中に、アメリカ人は5人しかいない。4人に3人は外国人選手で占められているということである。さらに、今年LPGAツアーでは23試合が行われているが、アメリカ人選手が優勝したのはわずか4回(3人)である。このように、アメリカ人選手はかなりの苦戦を強いられていることがわかる。

韓流ブーム到来か

 苦戦のアメリカ人選手と対照的に、アジア勢特に韓国人選手の躍進が続いている。というより、韓国人選手の台頭によって、アメリカ人選手が活躍しにくくなったと言ったほうがいいのかもしれない。なにしろ、先ほどの獲得賞金ランキングの上位10人中5人が韓国人選手なのである。さらにそのランキングの1位の2位は、どちらも韓国人選手である。
 パク・セリという一人の韓国人選手が1998年に全米女子オープンを優勝するまで、韓国勢の活躍はほとんどないといっても過言ではなかった。しかしその優勝以降、一流選手となったパク・セリを目指したくさんの韓国人選手が海を越えるようになり、いまや韓国人選手がゴルフ界をリードするようになった。地理的に近い欧州諸国カナダでもなく、アジアの韓国にリードされるということは、アメリカ人スポーツ界の中でかなり異例のことであろう。

個人スポーツは大変!?

 サッカーの欧州各国リーグも、外国人選手が活躍しているという点では同じだが、ゴルフがサッカーと違うところは、ゴルフが個人スポーツであるという部分である。チームスポーツの基本スタンスは、外国人であろうが自国の選手だろうが、チームを応援するというところであろう。
 しかし、ゴルフのような個人スポーツの場合はどうだろう。当然、応援する対象は一個人になる。となると、自国の選手を応援したいという気持ちが強くなるのではないだろうか。アメリカ女子ゴルフも、勿論アメリカ人びいきの応援が行われているはずであり、その中でアメリカ人が全く勝てないという事態になっている。
 このままアメリカ人選手が勝つことが難しい状況が続くと、人気の低下も避けられない。事実2010年のツアーは2009年より一試合減っているし、今後さらなる減少もあるかもしれない。スポンサー側が宣伝効果に対して、疑問を持ったとしても不思議ではない。

次世代からの挑戦状

 しかし、光がないわけではない。アレクセイ・トンプソンという選手をご存じだろうか。彼女は15歳ながら、全米オープンで10位に入ったこともあり、将来の活躍が期待されている。日本の男子ツアーは長年人気の低下を叫ばれてきた。しかし石川遼の登場により、一気に人気が回復しており、同じことがアメリカで起きたとしてもおかしくはない。
 大相撲と同じように、窮地を迎えているアメリカ女子ゴルフではあるが、今後事態は好転するのか、あるいは悪化の一方なのか。今後も見守っていきたい。

参考
アメリカ女子ゴルフ協会 http://www.lpga.com/default_new.aspx

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