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働く女性の姿~自分らしさ溢れる人生のフルコースを~

仕事上での男女差とは

徳岡:大学を卒業されてからのお話を聞かせてください。

飯野:私は大学を卒業して、小さな出版社に入ったんですけれども、差別を受けた記憶はなかったですね。商社に入った友達とかに聞くと、やっぱり男女差は歴然とあったりした時代だったんですけども、会社が小さいとそういうことを言ってる場合でもなく。出版社には3年いて、それからはコンピュータの仕事に移ったんですけども、そっちにいくと男女の差は余計になかったですね。プログラムが得意な人、お客さんとの交渉が得意な人、資料を作るのが得意な人といったように役割の違いはあるんですけど、男女の差を感じたことは未だにないですね。転職は何回もしていて、コンピュータだけでも3回ぐらいしてますし、出版社も2社ぐらい変わってるんですけど、差別を感じて辞めたということはないですね。友達に聞くとあったみたいなので、私はすり抜けてきた感じはちょっとありますね。

清原:私はラジオ局にアナウンサーとして社員で入社しましたが、男女で給料差はあったと思うんです。でも、私の場合は女性で得したっていうのがすごくあって。というのは、(番組として)硬派なものに興味があったんですが、旅番組とか芸能番組とかではなくて、社会や政治問題などの硬派ものを女性でやる人は少なかった。その後フリーアナウンサーを経て、いまはフリーライターとして仕事をしていますが、ずっと「硬派」に関わっているので、多分レアケースだと思いますが、女性で得した部分はすごくあったと思う。

石井:私は、大学を出てから留学をしまして、アメリカの大学に行って終わってからしばらく4年半ぐらい仕事をしていました。

中村:現地でお仕事されていたんですか。

石井:現地と言っても、日本の航空会社のアメリカ法人です。男女の差はあんまりなかったですね。その代わり日本から来た本社雇いとローカル雇いの差はありました。その頃、周りは全部国籍が違う人ばっかりだったので、あまり男女の差は考えなかったです。日本に帰ってしばらくは子育てをしたものですから、フルタイムの仕事はしていなかったですけど、子供が幼稚園に入ってからもう一度仕事をしようと思って復帰しました。それからは広告代理業にずっといました。最初は外資系でしたけれど、男女の差はありましたね。女性は何となく補助職のような感じで、これではおもしろくないなと思ったので転職しました。転職した所は典型的な日本の企業で、当時女性は全て補助職だったのですけれど、私は中途採用で、アメリカの大学を卒業し仕事をした経験を買われて入ってすぐに管理職になりました。管理職になったと同時に給料は同じ職位の男性と同じになりました。でも、大きな仕事は男性にというところはありましたね。ただ、国内系の代理店では、私がアメリカにいたという経験が他の人との差別化にすごく役に立ちました。徐々に知名度の高いグローバルクライアントを担当することが出来るようにました。

中村:運よくというか、何かそういった男女差を感じない要因があるから、長く仕事を続けられるんでしょうか?

石井:他の人にはない強みを持ってるから、転職もできるし、長く働けるんだと思います。でも大切なのは続けることだと思います。

就職に対するモチベーションの昔と今

石井:私たちの時代は就職するのは至難の業で、教職に就くかマスコミに行くかでしたね。製造業や銀行に入っても一般職で、高卒の方と同じ待遇でした。新聞社とか出版社は、多少の男女差はあったかもしれないけど、女性も定年までお勤めするのが普通みたいなところがあったと思います。

中村:私自身が就活をしていた時、就職するよりもさっさと結婚したいという女性が増えていると感じたのですが、若い世代の女性に長く働いてほしいという風に思いますか?

飯野:働くことに対して合う合わないというのはあるので、無理して働くことが全てではないと思いますね。

清原:その人の人生だからその人が決めればいいな、というのは基本的に思ってますね。

石井:私は、合う・合わないがあるから合う仕事を探せばいいと思うの、努力して。私は働くことはキホンのキだと思っているので、働かないという考え方はあり得ないと思う。合う仕事を探す機会ってたくさんあるわけだから、本人が探す努力をすべきだし、自分のご飯は自分で仕事をして得たお金で食べるべきだとずっと思っています。飯野さんも清原さんもそう思っているのではないでしょうか?

徳岡:長く働くからには、女性でもどんどん出世できたらいいですよね。

石井:女性は、新卒の時は男性よりも成績が良いのに、課長ぐらいになる時にすごくふるいにかけられちゃう。男性は、自分の将来像を予測できるロールモデルが周りにたくさんいるし、日々上司や先輩から企業人として必要な色々なことを学ぶ機会を与えられています。でも女性の場合は、新卒で入って専務取締役とか常務とか執行役員になっている女性がいる企業って本当に少ないですよね。それを考えると、女性もこれからは男性もロールモデルにしていった方がいいわよね。「女性は女性のロールモデル」と決めつけないで男性からも学ぶところはたくさんありますよ、ビジネスパーソンとしては別に男も女も関係ないってところがあるから。私が影響を受けた先輩・上司はほとんど男性です。

中村:先ほどの就職したくないという女性の話と関連して、管理職にはなりたくないという女性も多いと聞きます。

石井:ロールモデルがいないっていうのもあるけど、キャリアアップしている女性の先輩はいるけど髪を振り乱して仕事ばかり、結婚もせず、男性の何倍も頑張って、疲れ果てている人が多い。「あそこまで私はやらなくてもいいな」っていうのが多いんですよね。結婚していなくてもいいから素敵なプライベートの生活を持っているようなバランスの取れた女性の先輩が多くなるといいですね。

アンテナを張って人生のフルコースを

徳岡:女性が長く働いていく上で大切だなと思うことは何かありますか?

石井:男女雇用機会均等法一期の人やそのあとの時代の人が言うのはね、「男性と女性を比べた場合、女性だけが人生のフルコースを楽しめる。仕事も楽しめる、子供も産める、結婚もできる、妻にもなれる。そういう意味でたった一度の人生ならば、その時は辛いかもしれないけれど、やっぱり、経験できるものを全部味わうのも悪くない」って。そのためにはアンテナを張っておかなきゃいけないから、私は「TWN, 稲門女性ネットワーク」はそういうアンテナにもなってほしいと思っています。「仕事を変えたい」とか、「こんな悩みがあるけど、同じようなことを経験した人はいませんか」といったことをお互いにオープンに話し合える。学校が同じだというだけですぐ垣根が取れて、世代がちょっと違ってもお話ができたりするじゃないですか。そういう場であってほしいと思いますね。

 取材の最後、「女性だけが人生のフルコースを楽しめる」という言葉がとても印象的だった。女性にはライフイベントが男性に比べて多く、その分仕事面では男性のように組織の中心になって働くのは難しいかもしれない。しかし、今回お話を伺った石井さん、清原さん、飯野さんからは、経験できるものを全てやってみるという積極性や向上心が伝わってきた。そういった姿勢もまた、仕事上で男女の差をあまり感じずに長く働き続けられている理由の一つのように感じられた。  冒頭にも挙げたように、まだ女性で管理職や部長職など企業の第一線で活躍している人は少ない。そのためか、続く若い世代でも就職より結婚を考えたり、就職しても昇進欲を見せない女性が多い。だが現在は、昔に比べると働くことにおいて女性の選択肢は広がっている。企業も女性のライフイベントに合わせられる制度を整え、実行しているところが多くなった。女性はそれを受け身で捉えるのではなく、積極的に活用して自分自身の人生を豊かにしていくことが望まれるのではないだろうか。 (徳岡礼菜)

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