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スポーツ団体の果たす社会貢献とは ~JFAのキーパーソンに尋ねる~ 河口善優

スポーツ団体の果たす社会貢献とは ~JFAのキーパーソンに尋ねる~

 東京オリンピックの開催決定、日本人選手の世界での活躍など、現在日本のスポーツ界は盛り上がりを見せている。国際的な試合や、チーム、選手個人の話題はよく報道されているが、日本国内におけるスポーツ団体について知る機会はあまりないのではないだろうか。その代表例として日本サッカー協会を今回は取り上げたい。
 公益財団法人日本サッカー協会(以下JFA)は、日本サッカー界を統括し代表する団体として、サッカーを通じて豊かなスポーツ文化を創造し、人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献することを目的として、1921年に大日本蹴球協會という名で設立された。
 昨今のサッカー日本代表の活躍やJリーグの2ステージ制への移行などで、JFAの名前を目にする機会は多いが、彼らの“公益財団法人”としての役割について知る人は多くないのではないだろうか。今回、御茶ノ水のJFAオフィスであるJFA HOUSEを訪れ、JFAプレジデンツ・ヘッドクォーターズ(以下PHQ)係長の根本敦史氏にインタビューを行った。PHQとは、団体ではカバーしきれないような特命事項を果たすJFAの組織であり、現在7名で構成されている。JFA HOUSEは、二階以上がJFAのオフィスであり、一階~地下二階は日本のサッカーに関する歴史を振り返るミュージアムとなっている。Jリーグの発足やワールドカップ初出場の時の様子、当時のユニフォームなどが展示されており、一人でも長時間楽しめる施設であった。


JFA PHQ係長の根本敦史氏

日本サッカーミュージアム(出典:公式HP)


川淵三郎氏の抱いた問題意識
 元日本代表監督を務め、第10代目JFA会長である川淵三郎氏(現JFA最高顧問)は、早稲田大学の卒業生であり、筆者の大先輩である。彼は会長時代に次のような想いがあったという。“サッカーの普及のためだけじゃなく、今スポーツができる環境を作りたい”。
 「街の都市化が進み、子供が外遊びをすることができる『場所』や『時間』、そして『安全性』が無くなっている。その結果子供の基礎体力が低下している、といった危機意識を川淵元会長は感じていた。」と根本氏は語る。川淵元会長の意思を継ぎ、現在はPHQの彼らが中心となって様々な社会貢献活動を行っている。


「JFAキッズプログラム」の推進
川淵元会長の問題意識から始まったのが「JFAキッズプログラム」である。身体の発達がめざましい幼児期や小学校低中学年代において、多くの子供達に身体を動かすことの爽快さやスポーツの素晴らしさを体感してもらいながら、ボール遊びの楽しさを知ってもらう試みである。全国のインストラクター達が各都道府県の幼稚園、小学校を巡回し、外遊びを普及させている。JFAではさらに、“外遊びがしたくなるような環境”を作ることにも力を入れており、幼稚園や小学校のグラウンドを芝生化する事業も進めている。
「芝生では、子供たちが真ん中に集まり、ボディタッチが多くなる」と川淵元会長は繰り返し言っていたという。精神的にも走り回りたくなる効果が芝生にはあるらしい。確かに、筆者も幼少期に芝生を見たら不思議と気持ちが高まり、走り回った記憶がある。JFAでは2008年から現在まで、約50ヶ所以上、年間サッカーコート22~23面分の敷地を芝生化してきた。



「夢の教室」で心を育む
身体面だけでなく、子供たちの精神面の支えとなるような企画も2007年度からスタートした。それが「JFAこころのプロジェクト」である。
子供たちの強い心を育てるために、サッカー日本代表を含む現役・OBスポーツ選手が「夢先生」となって小学校の教壇に立ち、夢や目標を持つことの素晴らしさ、それに向かって努力することの大切さ、フェアプレーや助け合いの精神を育むことを説いていく。
「夢の教室」というこの授業は主に小学6年生を対象に行い、皆で体を動かしながら、一つの目標を協力してやり遂げることやルールを守ることの大切さを伝える「ゲームの時間」と、夢先生がこれまでの人生を語りながら、挫折を乗り越え、夢を達成してきたエピソードを語る「トークの時間」から成る。もちろん、子供たちにも未来をイメージしてもらい、どんな夢を持って歩んでいくかを考えてもらう時間も設けている。


東日本大震災直後、復興支援プロジェクトを始動
皆さんの記憶にもまだ新しいであろう、2011年3月11日に東日本大震災が発生した。この震災が起きた直後、JFAでは復興支援プロジェクトが始動した。このプロジェクトでは主に、救援物資の運搬とサッカー場の整備を行い、それは現在もまだ続いている。
 震災によって、多くの子供たちが家や物を失った。少しでも彼らを元気づけるため、JFAはサッカーボールやサッカーウェアを送ったり、元日本代表がサッカー教室を開催したりする企画を行った。その際参加チームの交通費もJFAで補助したという。
また、彼らの学校のグラウンドに仮設住宅が建ち、サッカー拠点が無くなってしまったという事態を受けて、サッカー場の整備を進めた。具体的には、岩手県釜石市や陸前高田市に人工芝グラウンドを設置したり、宮城県松島市の瓦礫処理にも協力したりした。

「大船渡の中学生たちが東京に来た際、わざわざお礼を言いにJFAを訪れて来てくれたんですよ。」と根本氏は嬉しそうに振り返っている。


今後のJFAの社会貢献活動
根本氏に今後JFAが果たしていきたい社会貢献は何かと尋ねると、「グリーンプロジェクト(芝生化)を中心に進めていきたい。増えてはきたが、やはりまだまだ足りない。」と答えた。芝生のグラウンドができると、子供たちだけでなくその他の地域の人々も利用することができ、地域貢献にもつながる。筆者自身、こういったJFAの社会貢献活動についてあまり知らなかったが、その貢献度は高く、子供たちや被災地の復興支援のためだけでなく、多くの人の役に立っている。JFAは本来サッカーの普及、強化をするための公益財団法人である。しかしサッカーだけに留まらず、子供の身体、精神面のサポート、さらにはスポーツができる環境作りにも着手するJFAの活動は、日本を大きく支えていると言えるだろう。


<参考>
根本敦史氏インタビュー(2013年12月20日JFA HOUSE@御茶ノ水)
公益財団法人日本サッカー協会ホームページ(最終閲覧日2014年5月13日)
http://www.jfa.or.jp/index.html
  日本サッカーミュージアム(最終閲覧日2014年5月13日)
http://www.11plus.jp/ 
伊賀タウン情報ユー(最終閲覧日2014年5月13日)
http://www.iga-younet.co.jp/youmovie/index.php?category=2&page=46
東北3県サッカー場の復旧支援活動(最終閲覧日2014年5月13日)
http://www.menicon.co.jp/company/soccer/


(河口善優)

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