タナカの効果について一度ミャンマーの友人に聞いてみた所、ファンデーション、日焼け止め、スキンケア、といった多様な用途がタナカにはあるようです。
特にミャンマーはアジアの中でも非常に暑い地域であり、日差しも殺人的に強いこの地域ではタナカが日焼け止めとしての大きな効果を果たしています。
タナカは小さな女の子が使うことが多いのですが、その理由は強い日差しによる肌荒れを防ぎ、将来しみやくすみが出来ないようにするためだそうです。
小さい頃は外出する前にお母さんにタナカを塗ってもらう事が習慣だったという人もおり、私がホームステイした家でもお母さんは娘にタナカを塗っていました。
ミャンマーのタナカには母親の愛情も込められているのです。
今回タナカに関する記事を書くに当たってやはりタナカについてミャンマー人の方のお話を伺いたいと思い、ある店に取材を行いました。
早稲田大学早稲田キャンパスから徒歩1分、早稲田生にはお馴染みの定食屋「キッチンオトボケ」です。
あまり知られていないかもしれないですが、実はオトボケの店員さんは店主の方以外全員ミャンマー人、安くて美味しいオトボケのご飯はミャンマーの方が作っているのです。
チェイズーティンバーデー!(ミャンマー語のありがとうございます。)
そして以下がインタビュー内容です。(敬称略)
武田:早速なのですが、ミャンマーの人々が使っているタナカとはどんなものか教えていただいてもいいですか?
イェ:タナカは日差しの強いミャンマーで女の子や小さい子が肌を守るための日焼け止めとしてよく使われます。小さい子ですと、女の子より男の子がよくつけます。
ただ、大人になると皆タナカより化粧をしますし、最近はK-POPが流行している影響でタナカより普通の化粧をする人のほうがヤンゴンでは多いと思います。
でも田舎では農作業のために顔全部に塗る人が多いですね、外は日差しが強いですから。
武田:最近はタナカではなく普通の化粧をする人がヤンゴンでは増えているという話ですが、将来的にタナカという文化は残ると思いますか?
イェ:文化として残っていくと思います。自分も含め最近の子供達を見ると、消えつつはあるけど好んでいる方がいるとは思うので、完全に消える事は無いと思います。
今は日本で着物とかを着る人はいないけれど、文化はあるじゃないですか、そういう感じになると思います。完全に皆が着るわけではないですけど、何かの行事があるときは着るという・・・
武田:そういうミャンマーの文化としては残っていくと。
イェ:そうですね。
ケー:女性にとっては、外ではタナカを付けなくても家では付けるということがあります。
イェ:そうですね。涼しくする効果があるので。
ケー:それと、しみとかを防げるので
武田:そうなんですね、それは都会の方でも?
ケー:そうですね、都会のほうでも家の中でしている人はいると思います。
イェ:そういうこともあるので(タナカは)完全には消えないと思いますね。
武田:イェさん自身はタナカに思い入れはありますか?
イェ:私は今日本で、ミャンマーから離れているので、家ではいつもロンジー(ミャンマーの民族衣装)ですし、日本にタナカがあれば、付けていても恥ずかしくないと思います。ただ、仕事のときはタナカをめっちゃ付けていくと礼儀悪く思われますけど。
武田:ミャンマーでもそれは失礼なんですか。
ケー:タナカはやはりオフの時間に付けるものですね。
イェ:仕事のときは付けないですね、自分も中学生のときは学校では付けなかったけど家に帰ると付けていました。
武田:やはりタナカは残っていってほしいですか?
イェ:うん、やはり消えるのは寂しい。
武田:ケーさんはどうですか?タナカが今化粧の影響で減っているようですが。
ケー:確かに日本とかから化粧が入ってきたら減るかもしれないけど、ミャンマーだけじゃなくて、世界でもタナカを使って化粧品が出来たら、クリームみたいにして、それが出来るかもしれないから。日本でもミャンマーからタナカを送って、化粧する人もいると見たことがあります。
武田:じゃあむしろ、ミャンマーで消えていくというよりも逆に世界中に広がっていくかもしれないですね。
ケー:それがいいですね。
武田:最後に質問したいんですが、日本で田中って名字の人を見たとき、どう思いました?
イェ:あ~、(ケーさんが怪訝な顔をしたのでミャンマー語で通訳をする)
ケー:そんなに変には感じませんでした。
武田:あ、そうですか・・・
イェ:あれは日本語で言うと「タナカ」じゃないですか、ミャンマー語で言うと「タナカー」なんです。
武田:日本語と発音が違うんですか!
イェ:日本語ではタナカ、ミャンマー語ではタナカーなんです。
武田:全然分からないですね。(笑)
ケー:ミャンマー語のほうはカーと伸ばすんです。
イェ:日本人の人はタナカーのことを言われると「田中さん」を思い出すかもしれませんが、私達はそういう「田中」と聞いてもタナカーはイメージしないです。
武田:最後に大発見でした。(笑)
【タナカの未来】
インタビューを通して印象的だったのはイェさんのタナカは日本の着物のように文化になっていくだろうという発言です。
確かに着物は日本の文化ですが、今やほとんどの人は普段の生活では着ません。
ミャンマーの人々が外国の影響を受けてタナカを使わなくなっている現象は日本の着物にも起きたのかもしれないと考えると、
グローバル化には固有の文化の衰退という側面もあるのかもしれないと感じました。
最後に、今回インタビューに協力してくださったキッチンオトボケのイェさん、ケーさん改めてありがとうございました!