土屋ゼミ6期 柴田
11月7、8日の二日間にわたって早稲田祭2015が開催され、早稲田の街はいつになく活気づいていた。普段は浮かない顔をした学生たちが背中を丸めて歩くキャンパスも大観衆で賑わい、容易には前へ進めないほどの人々で溢れかえっていた。
学生間の通説では、早稲田には4000以上のサークルが存在すると言われている。二日間で16万人(早稲田祭公式HPより)という日本一の来場者数を誇る早稲田祭において、自らの所属する団体を事前により多くの人々に知ってもらえるかどうかは死活問題だ。つまり、早稲田祭当日よりもっと前から、彼らの戦いは始まっている。それでは、各団体はどのような宣伝方法を使用しているのだろうか?アナログ、デジタル、イベントの大きく三つに分けて考えた。
(1)アナログ
①ビラ
公演や企画の情報を掲載した紙媒体。モノが手元に残るため、受け手の印象に残りやすい。その一方、制作や印刷に費用と手間がかかり、それなりにかさと重量があるために保存場所からの運搬が困難になる。早稲田祭直前になると多くの団体がビラ配りを開始するため、南門付近や大隈銅像前には一種の“ビラ花道”のようなものが出来上がるが、避けて通ることは厳しい。
筆者も実際にビラ配りを行ってみてわかったが、ぶっきらぼうに断られると非常に悲しい。ビラを配っている人がいたら、ぜひ笑顔で会釈くらいはしてあげてほしいものだ。さらには、ビラのポイ捨てや、ビラでゴミ箱が溢れかえるなどといったゴミ問題も深刻化しているため、環境系サークルは仕事が増えて悲鳴を上げている。
②立て看板
早稲田キャンパスや戸山キャンパスの外周にくくりつけられている、縦2メートル×横80センチほどの大きな看板。早稲田祭運営スタッフによる抽選で設置場所が決められ、当然どの団体も、より人目に付きやすい門の近くを狙っている。
各団体のデザイン力が試されるため、一目見ただけで企画内容がわかるようにしなければならない。多くの団体は、学生会館の地下二階の屋外スペースにブルーシートを敷いて作成しており、作業中に突然の雨に襲われ室内へ避難することもしばしば。
一枚のベニヤを毎年塗り替えるという方法をとっているため、代々の先人たちの思いが詰まっているとも言えよう。
③移動式看板
棒を取り付けた、持ち運び式の小さな看板。大声で企画内容を叫びながらキャンパス内を練り歩くのが一般的な方法である。最近では、看板を持って着ぐるみなどと一緒に写真を撮り、応援部などフォロワー数の多いTwitterアカウントに載せてもらうという猛者が増えてきている。
まさにアナログとデジタルとの融合である。また2015年は、早稲田大学広告研究会の「学生補完計画」という企画宣伝がSNSを騒がせた。出演者である俳優の佐藤二朗さんの顔を大きく印刷し、看板にして注目を集めていたのだ。
なんと佐藤さんがこの状況を知り、企画の公式アカウントにご本人から皮肉と激励を込めたリプライが直接送られる、という珍事件も発生した。
(2)デジタル
①Twitter、Facebook
不特定多数を対象とした情報共有が可能なSNS。デジタル社会となったこのご時世、ほとんどのサークルが公式アカウントを所有している。当日の会場やタイムスケジュールなどを一挙に配信でき、さらにはリツイートやシェアといった機能で、情報を日々拡散させていくことが可能。
スマートフォンを利用して、いつでもどこでもリアルタイムな情報を送信するのが強みだ。ただし、誤った情報を流してしまった際に、訂正するも収拾がつかなくなっている状況をよく見かけるので注意が必要。
団体によっては、メンバーの写真とともに当日へのカウントダウン企画を行ったり、団体名のハッシュタグ利用を促すなどして早稲田祭への士気を高めるという方法をとることもある。
②LINE
大学生での普及率が97%に達しているとも言われている、メッセージ送信のためのコミュニケーションアプリ。特に、様々なグループラインを利用して、自分が所属する団体の公演内容や模擬店の情報を共有する。
友達や知り合いに向けて直接来場を訴えかける作戦である。そのため、高校時代の部活や大学一年次のクラスなど、数年間全く動きのなかったグループラインに突然メッセージが投下されることがあるが、スルー率は99%。
全く反応がなかったとしても、自団体のために心折れることなく宣伝活動を続ける心意気が大切だ。また、タイムラインという比較的新しい機能に情報を掲載する方法もあるが、タイムラインそのものを活用している人がそもそも少ないために効果は小さいと思われる。
(3)イベント
①前月祭、Countdown Event、前夜祭
前月祭とは、早稲田祭の約一か月前に大隈講堂を貸し切り、早稲田のパフォーマンスサークルが主体となって行うイベント。
2014年に初開催され、広大な大隈講堂が満員御礼となった。このイベントによって団体間の横のつながりが生まれ、互いのさらなる宣伝に繋がっている。Countdown Event、前夜祭は早稲田祭運営スタッフが主催するイベント。
早稲田祭に対して興味の浅い学生をターゲットに、当日への士気を高め来場してもらうために行われる。人気サークルのパフォーマンスを一度で一気に見られるというメリットがあり、さらにそこでしか見られないサークル間のコラボレーションが披露されるため必見である。
②銅像前パフォーマンス
文字通り、大隈銅像の前で実際に行われるパフォーマンス。機材なしに手軽に行えるダンスや楽器のパフォーマンスが行われることが多い。
時間帯はお昼休みが中心であり、より多くの目に触れられ、団体に興味を持ってもらうきっかけとなる点で効果的である。
ちなみに、筆者が見た中で最も印象的だった銅像前パフォーマンスは、企画サークルの「納豆を一万回かき混ぜる」というものである。
私が見た時にはすでに液体状になっていたが、彼らは何限までかき混ぜ続けていたのだろうか。
このように、自分が知らなかったような刺激的な団体に出会える場でもあるため、ぜひ足を止めて観賞していただきたい。
以上に紹介したように、各団体は様々な宣伝方法を組み合わせて活用し、早稲田祭に向けて知名度を上げようと努力している。
この記事を読んでいるあなたも、彼らの発するサインを鬱陶しく思わずに耳を傾けてみよう。そして、今年の早稲田祭に来場し、一つでも多くの団体を見てみよう。
早稲田の地で、新たな世界が開けるかもしれない。